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生薬

麝香(ジャコウ)

おもな薬能
開竅豁痰(かいきょうかったん)、清熱解毒、高熱や熱病による意識障害、炎症や痙攣、滋養強壮、強心、小児用、感冒、胃腸

画像の説明



「神農本草経」の上品に収載される生薬。

雄のジャコウジカの香嚢にある分泌物を乾燥させたものです。

現在、野生のジャコウジカは乱獲により絶滅の危機に瀕しており、ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)により商業目的の国際取引は原則禁止とされ、取引には国の許可が必要となり“最も高価な生薬”と称されています。そのため、飼育されたジャコウジカからジャコウを採取する取り組みが続けられています。

別名

当門子(とうもんし)、元寸(げんすん)、元寸(げんすん)香(こう)、香(こう)臍子(さいし)

薬味(やくみ) 薬性(やくせい) 帰(き)経(けい)

薬味:辛  薬性:温  帰経:心・脾・肝

性状

シカ科ジャコウジカの雄の香嚢にある分泌物を乾燥したもの。いわゆる「ムスク」のことで香水の原料としても有名。『神農本草経』の上品に収載されている。玉麝香と身麝香があり、芳香は濃厚で、久しく香りをかぐと独特の有騒性の香味が感じられ、味はやや苦く口から鼻にぬける香味がする物が佳品。現在市販の麝香は、全て人工的な加工が施され純品はないが、その中でも化学的評価法によりmuscone 2%以上、C19-sterroid 0.5%以上の麝香は一応信頼すべきとされている。

  • 玉麝香
    中国では整(せい)麝香(じゃこう)、整(せい)香(こう)、毛(もう)香(こう)などと称され、袋状腺嚢(のう)(麝香嚢)に入ったもので、
    球形、壺形、扁円形で3~7cm、外面は白色、灰色あるいは淡褐色の細短毛が
    ある。中央に嚢口である2~3mmの小孔があり、これに対して毛が渦巻状に
    配列している。
  • 身麝香
    中国では麝香仁、散香と称され、麝香嚢内にある麝香の中身。新鮮なものは、
    褐色~黒褐色の軟膏状で乾燥するとやや粉末状になり、中に大小不同で黒暗褐色小塊状の粒がある。これを当門子と称し時に細い毛が混入する。

成 分

香気成分ムスコン・ムスコピリジンなど。ステロイド類・ステロール類。蛋白質(約25%)・アミノ酸・カリウム・ナトリウム・カルシウム・マグネシウム・亜鉛など。

薬理作用

  • 中枢神経系に対する作用
    1. 少量では中枢神経興奮作用、大量では抑制作用を示す。
    2. O2欠乏の耐容力を増強させるため、意識障害や痙攣性疾患にも作用する。
    3. 降温作用があるといわれている。
  • 心血管系に対する作用
    1. 強心作用があり心収縮力を増強、心機能を亢進させるが心拍数には影響なし。
    2. 末梢血管を拡大させ、その抵抗の減弱により降血圧作用を示す。大量では、
      心拍数減少。末梢血管拡張は心筋O2消耗量減少、狭心症の寛解に役立つ。
    3. カテコラミン類のβ-受容体作用を増強する物質を含む。
  • 実験的虚血性心疾患に対し、血小板数の減少抑制、抗血小板凝集や抗凝血酵素作用をしめす。
  • 抗炎症作用
    炎症の進展過程で血管透過性の増進や白血球遊走及び肉芽形成の3段階において抑制作用を示す。これは、副腎皮質機能の増強作用によると言われる。また、アラキドン酸代謝のリポキシゲナーゼを抑制し、炎症性反応を抑制する。
  • 抗菌作用
  • 男性ホルモン様作用
  • 子宮の筋肉を興奮させて収縮を増強するため、妊婦には禁忌である。
  • 消化性潰瘍の治癒促進作用・胃液分泌の抑制作用

古典での薬理薬能

強烈な作用を有する代表的開竅薬。寒閉と熱閉の両証に使用可能

芳香開竅
芳香性が非常に強く最も強い開竅作用を有する重要な開竅薬。
温性で寒閉証によく合うが、清熱薬の配合で熱閉証にも多用される。

 
熱や痰熱が心包に入り込んだ病態至宝丹・安宮(あんぐう)牛(ご)黄丸(おうがん)
寒閉蘇合香丸

活血消腫・止痛
強い辛性と芳香性により瘀血を除き経絡を通じさせ、腫脹を散じ止痛する。皮膚化膿症・腫脹(癥瘕(ちょうか)、癭(えい)瘤(りゅう)など)・外傷打撲・痺証の関節痛・閉経・胸痛・腹痛などに使用。近年では、狭心症や心筋梗塞にも適応。

 
皮膚化膿症醒消丸
咽頭発赤腫脹腰痛六神丸
閉経や腫瘍桃仁・紅花
胸痛や腹痛、外傷打撲の疼痛や修復促進七厘散・八厘散

催産下胎
走竄(そうざん)性があり深く子宮に進入し、開通させる作用によって、胎児や胎盤などを下ろす。主に死産や胎盤排出不全などに使用。一般的には少量を使用する。
(処)下死胎方・香桂散

適応病証

  1. 冠状動脈硬化性疾患・狭心症・心筋梗塞
  2. 意識障害性疾患・脳卒中
  3. 血管性頭痛(偏頭痛)
  4. 悪性腫瘍
  5. 避妊 
  6. 慢性肝炎・早期肝硬変
  7. 白癜風(はくでんふう)

注意 禁忌

  • 催産下胎作用があり妊婦には禁忌。
  • 芳香辛性が強く気や陰液を消耗しやすいため、虚証には慎重に使用すること。

豆 知 識

麝香はかつて雄のジャコウジカを殺し、腹部の香嚢を切り取り乾燥して得ていた。 香嚢の内部にはアンモニア様の強い不快臭を持つ赤いゼリー状の麝香が入っており、1つの香嚢から30グラム程度が得られる。これを乾燥するとアンモニア様の臭いが薄れ暗褐色の顆粒状となり、漢方薬にはこれをそのまま使用。

麝香採取のために、年間1万~5万頭のジャコウジカが殺されていたとみられている。 そのためジャコウジカは絶滅の危機に瀕し、ワシントン条約によりジャコウの商業目的による国際取引は原則として禁止された。

現在では、中国においてジャコウジカの飼育と飼育したジャコウジカを殺すことなく継続的に麝香を採取することが行なわれるようになっているが、商業的な需要を満たすには遠く及ばない貴重品である。

麝香を含有する製品

牛黄清心元