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『常在菌』の存在がヒトを守る!
共生する菌とその働き
抗生物質に頼りすぎないために

第37号 ヒトと共生する『常在菌』

“天然のバリア”常在菌

自然界では異なる生物が互いに助けあう『共生』をしばしば見ることができます。クマノミとイソギンチャク、アリとアブラムシの例などが有名ですが、私たちヒトは常在菌と呼ばれる菌と共生しています。常在菌は皮膚、口腔内、腸内、肺、気管支、尿管などに存在し、皮脂、分泌液、食べカスなどを餌にして生きている病原性の弱い、またはない菌です。これら常在菌が、ほぼ一定の割合で拮抗していることで病原性の強い菌の増殖が抑えられているため、常在菌は天然のバリアであるとも言えます。中にはバリア機能以外の有用な働きをするものもいます。
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弱酸性を保つ皮膚の常在菌
皮膚の表面に住む常在菌には表皮ブドウ球菌、コリネバクテリウムなどが
知られています。特に、表皮ブドウ球菌は皮脂を餌に脂肪酸を産生して皮膚表面を弱酸性に保つ重要な菌です。表皮ブドウ球菌が皮膚を弱酸性に保っていることで黄色ブドウ球菌などのアルカリ性を好む病原菌の増殖が抑えられています。
皮膚の常在菌は、手を洗う、顔を洗う、お風呂に入るなどによって一時的に
流されても、残った菌の増殖や空気中に漂う菌の付着・増殖によって再び皮膚を覆うため、私たちは健康な皮膚を保つことができます。しかし、ゴシゴシと力を入れて体を洗う、必要以上に頻回に体を洗うなどによって皮膚が傷ついたり、皮脂が不足して乾燥したりすると、常在菌の叢が崩れ、皮膚の炎症や感染症が起こりやすくなるため注意が必要です。

ヒトと栄養を分け合う腸内細菌
腸内にはヒトの細胞の数を超える多くの菌が住み、その数は100兆個を超えるとされています。
その中にはビタミンB群(B1、B2、B6、B12、ビオチン、葉酸、ニコチン酸、
パントテン酸)、ビタミンKなどのビタミンを産生する菌、ヒトが消化できない
食物繊維を分解する菌、正常な便通を維持する菌など、ヒトにとって有用な菌が多数存在しています。
また、腸内細菌は病原菌の増殖を防ぎ、ヒトにもともと備わってい
る腸管免疫とともに腸管からの病原菌の侵入を防いでいます。例えば、
ビフィズス菌、ガゼイ菌などの善玉菌と呼ばれる菌は、ウェルシュ菌
やO157などの毒素を産生する悪玉菌の増殖を防いでます。
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常在菌と抗生物質①

前述のように、多種多様の菌からなる常在菌の叢は、ヒトの健康に大きく
関わっています。そのため、健康の維持にはその拮抗バランスの維持が不可欠です。しかし、このバランスに抗生物質の使用が大きな影響を与えているとして問題視されています。その影響のひとつとして菌交代症が知られています。

菌交代症
幅広い菌に効果のあるタイプの抗生物質を使用すると、常在菌を含めた多くの
菌が死滅し、その抗生物質では効果のない菌が生き残ります。
すると生き残った菌は周りの菌が死んでいるため増殖しやすく、異常に増殖します。
これを菌交代症といいます。臨床上問題となる菌交代症にカンジダや緑膿菌に
よるものなどがあります。
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カンジダ
カンジダは膣、口腔内、皮膚などにいる常在菌です。
しばしば、抗生物質を服用した女性の膣内で菌交代症を起こし、かゆみや炎症を伴うカンジダ膣炎の原因となります。吸入ステロイドの長期使用者や新生児などにみられる鷲口瘡の原因もカンジダの一種です。

緑膿菌
緑膿菌は抗生物質に強い性質を持ち、抗生物質使用時に生き残りやすい菌です。
そのため、しばしば菌交代症の原因となります。病原性は強くないため健康な人では問題になりませんが、病院などでは免疫力の低下した人が院内感染を起こすこともあります。

常在菌と抗生物質②

ある研究によると抗生物質を頻回に使った人はアレルギー発症率が高かったといいます。
その原因は、抗生物質によって抗原を分解する常在菌が死滅するためと考えられています。さらに、抗生物質の抱える最大の問題が耐性菌の発現ですが、その発現にも常在菌が関わっています。抗生物質の耐性は病原菌が直接獲得するとは限らず、常在菌が獲得した耐性遺伝子を病原菌に伝達していることもあるのです。

抗生物質が効かない!分解酵素NDM1を産生する大腸菌が発現
MRSAなどの多剤耐性菌に最後の切り札として使われてきた
抗生物質:バンコマイシンにも耐性菌が確認されました。
この菌は、ニューデリー型メタロβラクタマーゼ1(NDM1)という酵素を
産生してバンコマイシンを分解する能力を獲得した大腸菌でした。
新たな抗生物質とそれに対する耐性の獲得はまさにイタチゴッコなのです。

抗生物質は適切に使えば大変有益で、現代の治療においてなくてはならないものとなっていますが、その適正使用を担保することは今後の大きな課題です。
抗生物質の安易な使用は慎み、日ごろから免疫力を強化し感染症に対する抵抗力をつけることが求められます。健康雑誌等で目にする健康法の中には、
日ごろからストレスをためない、食生活に免疫力を強化する自然食材を
取り入れるなどの方法がありますが、これらはヒトにも腸内細菌にも優しい点で優れています。病気に負けない体を作るために、取り入れてみてはいかがでしょうか。

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